普段は全く意識しないけれど、当事者になって初めて知る
「妊娠出産育児に関する様々な国や組織の制度」があります。
何となく産休育休や給付金があるということは知っていたけど、
それらが一体どこから、どのタイミングで、どういう手続きをすればもらえるのか
までを知っている方は少ないのではないでしょうか。
会社に勤めている(雇用されている)女性であれば、殆どの手続きを会社がやってくれますが
これが自営業(法人代表・役員)の場合は、全てを会社任せにすればOK~という訳にもいきません。
大きい会社で総務部等があれば別ですが・・・
実際、自営業(一人法人)の私は全ての手続きを自分で調べて、自分で書類を作成し、自分で提出を行っています。
これがまたすごく大変!!!わからないことだらけ!
なので今回は同じような状況の自営業女性に少しでも参考になるように、私が行った妊娠出産に関する手続きについてまとめていきたいと思います。
※2019年度の制度・手続きになります。※個人事業主ではなく法人化している自営業です
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①社会保険料の免除
所定の手続きをすれば、産前産後休暇中の社会保険料の支払いが免除されます。
概要
産前産後休業期間(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも徴収しません。
被保険者から産前産後休業取得の申出があった場合、事業主が「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。
社会保険料=健康保険、厚生年金保険のことですね。
健康保険も厚生年金も毎月結構な額が引かれていくので、産前産後の働けない期間だけでも払わなくていいのは
とても助かります。
産前産後の期間分の支払いが免除されるとその分将来もらえる年金額が減るのでは・・
と心配になるかもしれませんが、
手続きさえすれば、この免除期間分も保険料を払っていたとみなしてもらえるので安心です。
提出書類と申請先
社会保険関係なので、この手続きは日本年金機構で行います。
その法人事業所の所在地を管轄する年金事務所が窓口となり、
直接提出でもいいし、電子申請、郵送でも受け付けてくれます。
提出する書類は
健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届
※日本年金機構のHPよりダウンロード可能
記入内容は特別難しいことはありませんが、年金番号が必要になるのでちゃんと調べておきましょう。
手続きのタイミング
この手続きは、産前産後休業中に行います。
私は事前に記入内容に問題がないかを窓口で確認してもらって、産休に入ってすぐに、書類を提出しました。
その他
この社会保険料免除には注意点があって、免除されるのは産前産後期間全てではなく、
産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)
となっています。
つまり上の図のように、産前産後休業のタイミングによっては1か月分の差が出てくるんですね。
私は上のパターンなのでちょっと損した気分・・
といっても産前産後休業期間は自分で勝手に決められるものではないので、運が良ければ少しだけ長く免除される・・くらいに思っておくのがいいと思います。
ちなみにこの社会保険料免除は、国民健康保険・国民年金に加入している個人事業主にも制度としてはあるようです。
その場合は年金事務所ではなく、区役所・市役所に行っての手続きになります。
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②出産育児一時金
これは良く聞くので知っている方も多いでしょう。
出産一時金が健康保険から支払われます。
私は全国健康保険協会(協会けんぽ)の東京支部に所属しているので、そちらでの手続きになります。
会社独自の健康保険がある場合は、手続きや金額が異なりますのでご注意ください。
概要
出産育児一時金は、被保険者及びその被扶養者が出産された時に協会けんぽヘ申請されると1児につき42万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は39万円(平成27年1月1日以降の出産は40.4万円)となります。)
※多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。
出産や妊婦健診は病気ではないので、保険がききません。
ですが健康保険の制度として、出産一時金として1児につき42万円が出産手当金として支給されるのです。
42万円で出産の全ての費用がカバーできる訳ではありませんが、
これがないと何十万円も自費で出さないといけなくなるので、経済的に子どもを産める人がかなり限られてしまいますよね・・
この手当金は国民健康保険でもあります。
会社独自の健康保険だと、さらにプラスで一時金が出るなんてところもあるみたいですね~
提出書類と申請先
申請をするのは健康保険。
私の場合は全国健康保険協会(協会けんぽ東京支部)です
提出書類は健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書
※けんぽHPよりダウンロード可能
ただしこちらは必ずしも提出が必要な書類ではなく(けんぽ窓口で確認済)
私の分娩先の病院では、
入院時に出産一時金の直接支払い同意書といったものを記入すれば、後はそのまま病院とけんぽでやりとりをしてくれるということでした。
なので、この手続きは自分の所属しているけんぽおよび病院に相談して、
どのような手続きが必要かを確認する必要があります。
手続きのタイミング
直接支払制度の場合は出産時の入院~退院までの間に、同意書に記入をすればOK。
ただし病院によって対応が異なると思うので、要確認です。
その他
出産先の病院やけんぽによって対応が異なるようですが、
この一時金の貰い方は
・直接支払制度
直接けんぽと病院とがやりとりをして、一時金で足りい差額を被保険者が支払うパターン
・受取代理制度
被保険者が全額出産費用を病院に支払い、後からけんぽに申請して一時金を支給してもらうパターン
の2種類があります。
殆どの人は、直接支払いを選ぶようですね。
後から戻ってくるとはいえ、一度に何十万も支払いをするのはちょっとドキドキしちゃうので
私も直接支払いにして、差額を病院に支払う形にする予定です。
受取代理制度の場合は、別の申請書を提出しないといけないのでけんぽのHPでご確認ください。
③出産手当金
産休中の働けない期間の給与補填の為の制度で、これも知っている方は多いと思います。
残念ながら国民健康保険加入者にはない制度です。
概要
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。出産日は出産の日以前の期間に含まれます。
また、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。
この出産手当金は、休業期間中には出ない給与の代わりに支給される手当で、
それまでに支給されていた給与の約3分の2程度が一定期間もらえるものです。
※条件によって異なる
給与が支払われていない期間分の支給なので、産休期間(産前42日産後56日)であっても、
その期間に給与が出ていれば、その期間分の手当は貰えません。
例えば、1/1~4/8が産休期間だとして、4/1~8にはもう仕事復帰して給与をもらったとすれば
手当が貰える期間は1/1~3/31までの日数分ということになります。
同じように休業期間中に給与が出るいわゆる「育休」という制度もありますが、それは雇用保険の制度の為
残念ながら雇用されていない自営業者には育休の制度はありません。
ですが、産前産後の期間は自営業者でも手当金支給対象となるのです。
提出書類と申請先
申請先は健康保険。
提出書類は健康保険出産手当金支給申請書
※けんぽHPよりダウンロード可能
この書類はちょっとわかりにくくて、私は2回もけんぽ窓口に相談に行きました。
ややこしいのは3枚目の「事業主記入用紙」で、ここの記入によっては手当がでない期間が出てきてしまうので、
わからなければけんぽに相談するのが一番です。
医師記入欄もあるので、出産時必ず病院に持って行って記入をしてもらいます。
手続きのタイミング
記入は事前にしておいた方が良いですが、提出は産休が終了した後になります。
その他
上でも書いている
手当がでない期間が出てきてしまう
について、ここは結構重要なポイントなので、けんぽで聞いた話を自分のメモとしても残しておきます。
ポイントは、給与が日割りで算出できるか否か、です。
■給与の種類が月給以外の場合
給与が月給だとしても日割り計算できる場合は何も問題ありません。
例)月給20万円 20日勤務 ⇒1日あたり1万円
産休に入る月の勤務日数が10日なので、その月の給与は10万円
という支払いが出来るのであれば、何も気にしないでいいので
実際に産休に入った日から産休が終わる日までを正しく申請すればいいだけです。
(損しないためにも産前産後期間分は給与なしでちゃんと休業するのがおすすめ)
■給与の種類が月給の場合
これは勤務日数に関わらず月額固定での給与を支給されている場合。
私もそうですが、役員や代表の給与=役員報酬はこの月給にあたります。
役員報酬は日割り計算ができないので、
その月に何日働こうが、何日から休もうが「〇月分」としてフルでその月の給与が出たことになってしまうのです。
例)月給20万円 20日勤務 ⇒ その月にフル勤務
月給20万円 0日勤務 ⇒ 勤務実態がなくてもフル勤務とみなされる
月給0万円 20日勤務 ⇒ 勤務実態があっても月給が0円の場合は、その月は休業扱い
※役員報酬の金額は理由なしに変えられないので、税理士の先生と相談してください
月の途中で産休に入ったとしても、〇月分の給与が出ていることになるので
残念ながらその期間の手当てが貰えないことになります・・!
これを回避するには、実際は〇月に数日働いたとしても〇月の月給を0円として丸々休業したことにして
産休期間の出産手当を満額貰うという方法をとるしかありません。
ただしその分経費周りで不都合が出てくることもあるので、よく税理士の先生と相談する必要があります。
正直この辺りは本当にわかりにくくて、
私もいまだにどうするのが正しいのかわからないのですが
けんぽに問い合わせしたり税理士の先生に相談したりして、手続きを進めていこうと考えています。
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④報酬変更の申請
産前産後休業後に仕事復帰した際に、報酬が以前より下がった場合に申請するものです。
産休明けの報酬額変更と通常の報酬額変更(随時変更)の場合とでは申請書類が異なります。
産休明けの変更と随時変更でどのような差があるのかはちょっとわからないのですが、
この後に出てくる「養育期間標準報酬月額特例の申請」でも必要になるので書類は準備しましょう。
概要
■産前産後休業終了時報酬月額変更届とは
産前産後休業終了日に当該産前産後休業に係る子を養育している被保険者は、一定の条件を満たす場合、随時改定に該当しなくても、産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間に受けた報酬の平均額に基づき、4カ月目の標準報酬月額から改定することができます。
ただし、産前産後休業を終了した日の翌日に引き続いて育児休業等を開始した場合は、この申出はできません。
単純に報酬額が変わるので、それに伴い社会保険料の金額も変わるという申請だと思っています。
産休後に育休を取得する場合はこの申請はできません。
(また別の申請書があるみたいですがよくわかりません・・)
提出書類と申請先
申請先は日本年金機構。
提出書類は産前産後休業終了時報酬月額変更届
※日本年金機構よりダウンロード可能
手続きのタイミング
提出は産休明けの報酬確定後のタイミングで大丈夫だそうです。
いつまでに必ず提出とは記載されていませんが、私は産休明け1か月以内には提出する予定です。
⑤養育期間標準報酬月額特例の申請
産前産後休業後に仕事復帰した際に、報酬が以前より下がった場合に申請するものです。
概要
■変更後の標準報酬月額が以前より下がった方へ
3歳未満の子を養育する被保険者または被保険者であった者で、養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合、「養育期間の従前標準報酬月額みなし措置」 という制度をご利用いただけます。
この申出をいただきますと、将来の年金額の計算時には養育期間以前の従前標準報酬月額を用いることができますので、『産前産後休業終了時報酬月額変更届』とあわせて、『養育期間標準報酬月額特例申出書』を提出してください。
簡単に言うと産休後3歳未満の子を養育している間に限り、
以前より報酬(給与)額が下がったとしても以前と同じ金額の報酬を支払っているとみなして
年金等が計算される、というものです。
産休期間中の社会保険料免除(払ってないけど支払いみなしにしてくれる)と同じ感じですね。
申請はこれと「産前産後休業終了時報酬月額変更届」を併せて提出する必要があります。
提出書類と申請先
申請先は日本年金機構。
提出書類は養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届
※日本年金機構よりダウンロード可能
手続きのタイミング
いつまでに必ず提出とは記載されていませんが、私は産休明け1か月以内には提出する予定です。
その他
この申請をする場合は、申請書だけでなく下記の書類も添付する必要があります。
ア.⼾籍謄(抄)本、または⼾籍記載事項証明書
イ.住⺠票の写し (コピー不可)
上記書類を揃える必要もあるし、
申出⽇が遅くなっても「申出⽇の前⽉までの2年間」については養育特例措置が認められるそうなので、
出産後の慌ただしい時に、急いで申請を出さなくても大丈夫そうです。
まとめ
自営業女性の妊娠出産まわりの手続きについて、全然知識もない私はかなり苦労したので
自分へのメモとしても残しておきたく、記事にしました。
役所での手続き、保育園申し込みや、帝王切開の場合の保険の手続きなど
産前に調べることわからないことやることが山ほどありすぎて、
幸せいっぱいマタニティライフとは程遠いしんどい時期を過ごしてきました・・
まだ全ての申請手続きが終わったわけではないので、
これからまた調べたり、書き直しが発生する可能性もありますが
申請の準備と確認はできているので、後は無事に産まれてくるのを待つだけです。
ネットで探しても、会社員の手続きやもらえる金額等については多くの記事があるけれど
「自営業女性が自分の為にする手続き」の記事があまり見当たらなかったので、
この記事が同じような自営業女性に少しでも参考になれば幸いです。
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